スマホゲーム、オンラインゲームのガチャのよくあるクレームに、「いくらくじを引いても当たらない」というのがある。
運営が不正をしてわざと当たらないようにしているのではないかというクレームである。
沢山のお金をつぎ込んでも、いっこうに当たりにならないのだから、客は怒り心頭である。
しかし、実はまっとうな運営をしていても、こういった客は必ず出てくるのだ。
では、計算で、これを検証してみよう。
例えば、当たり確率50%のくじがあったとする。簡単に言うと、当たりとはずれが同数のくじだ。
このくじを2回引いたとき、当たる確率の期待値は100%となる。
つまり大概の場合、2回引けば当たるという訳だ。計算上はそういうことになる。
ここで一人のユーザーの視点ではなく、運営側の視点で見てみよう。
つまり、沢山の人がこのくじを引いたとき、どれだけの人が当たるのだろうかを考えてみるのだ。
2回とも当たる人、25% ( 0.5 × 0.5 )
1回目当たって、2回目はずれの人、25% ( 0.5 × 0.5 )
1回目外れて、2回目当たる人、25% ( 0.5 × 0.5 )
2回ともはずれの人、25% ( 0.5 × 0.5 )
となる。
つまり、1/4の人は2回とも当たるが、1/4の人はどちらも外れてしまう。
この程度なら、2回外れた人も、まあ運が悪かったと思うだけかもしれない。
では、くじを引く回数を増やしてみよう。
当たり確率50%のくじを10回引いたとき、当たる確率の期待値は500%にもなる。
これだけあれば、まずはずれることはないだろうと、ユーザーは思う。
しかし、それでも、一回も当たらない人が発生する可能性はあるのだ。
当然、くじを引く回数に従って、まったく当たらない確率は、徐々に小さくなる。
以下は、引く回数によって、どれだけの確率で当たらない人が発生するかの式だ。
- 0.5^1 = 0.5
- 0.5^2 = 0.25
- 0.5^3 = 0.125
- 0.5^4 = 0.0625
- 0.5^5 = 0.0313
- 0.5^6 = 0.0156
- 0.5^7 = 0.0078
- 0.5^8 = 0.0039
- 0.5^9 = 0.002
- 0.5^10 = 0.001 = 0.1%
0.1%となるとずいぶん小さいように思えるが、母数が多ければ、少なからず全部はずれの人は現れる。
メジャーなオンラインゲームだと万単位で対象ユーザーがいるため、まったく当たらないユーザーが必ず生じてしまう。
(ちなみに、これは10回引いて全部当たる人の確率と同じだ。)
つまり、この例では、1000人に1人、10回引いても当たらない人がでてくるということだ。
運営側から見たらこの確率は「当たり前」のことであっても、その1/1000になってしまった人にとってはたまらない。
このくじは不正じゃないかと疑う。期待値が500%もあるのに当たらないのはおかしい、と。
そりゃ、クレームの一つも言いたくなる。
しかし、統計的にはそういう客が出てしまうのが現実である。
その人が、強クレーマーであったり、インフルエンサーであったりすると、大事になりかねない。
自分がそんな低い確率に当たるはずがないと信じきっている人に、正直に数字を示して説明しても分ってもらえるかどうか。
同じ確率で全部当たってしまった人は、ラッキーだったと喜ぶだけだが、全部はずれてしまった人は納得できない。
他のユーザー全員の当たりはずれの状況を示さない限り、運営を疑ってもしまってもしかたないだろう。
そこでこの問題への対策のアイディア。
逆に10回連続で外れた人には、特別な賞品を用意するというのはどうか。
それなりによい賞品を用意しても、わずか1000人に一人だ。
でも、くじを引く心理としては、8回目ぐらいから、はずれることを期待するようになって、ドキドキだ。
もし間違って9回目で当たっても、まあそれはそれで残念だけど、結局当たったわけだし苦情も出にくい。